「多くの従業員が、初めて使うSaaSに戸惑うことは容易に想像できましたから、WalkMeの導入は、操作教育を代替えすることに加え、新システムの稼働後に問い合わせが殺到するのを回避することが目的でした」と上野氏。そこで同社は、初めてSAP Concurで経費精算を行う人向けに、経費精算レポートの作成プロセスを最初から最後まで補助してくれる一気通貫ガイドを作成。さらに、よく使うメニューは一覧にして、迷うことなくスムーズにアクセスできる環境を用意した。
上野氏は、自社開発システムとSaaSとの違いに言及し、こう説明する。
「自社開発システムはオーダーメイドで自社のルールに対応できる反面、システム担当からすると、法令対応やソフトウェアの更新などに自社で対応しなければならず、システム運用に関する専門知識を持ち合わせた人員の確保も必要です。一方、SaaSは一般的なルールに対応している分、自社のルールに合わない部分がどうしても出てきてしまいますが、インフラのメンテナンスも不要で、運用の手間がほとんどかかりません。システム担当にとってSaaSはやっぱり便利だなという印象で、今さら自社開発には戻れないというのが本音です。
つまり、問題は、旭化成のルールに合わないという点だけなのです。たとえば、従業員に利用させたくない機能があるとか、当社には必要のない項目が必須項目になっているとか、従業員に説明するのも実行させるのも難しい操作があるといったケースです。しかし、これらはWalkMeですべて解決できることがわかりました。」
同社は、削除機能が利用できないようにするためにボタンを画面の背景色でマスクしたり、自社にとって不要な必須項目には固定の文言を自動入力させたり、難しい操作を簡素化して迷いなく実行できるボタンを作成したり、すべての画面にFAQへのリンクを設定したりなど、WalkMeを実装することでSAP Concurを自社仕様に変更していった。上野氏は、これを「SaaSの自社化」と表現する。
「要らないものは隠せるし、ガイドを追加してわかりやすくすることもできます。SaaS側で当社が望んでいないような機能が追加された場合も、WalkMeで都度対応すればいいわけです。何より、ベースのソフトウェアに手を加える必要がないので、気軽に作って実装でき、うまくいかない場合はより良いものに速やかに変更することもできます。WalkMeさえあれば、まるで自社システムのように変更できてしまいます。SaaSなのにすでに旭化成のシステムになっていると言っても過言ではありません。」
こうして早くもWalkMeが手放せなくなった同社は、2年後のSAP Concur Invoice導入時にも、迷うことなくWalkMeの実装を決めた。