新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、多くの企業がリモートワークを推奨する中、リモートワークに必須となるリモート会議ツール、その代表格である Zoom が注目を浴びています。そして、リモートワークをうまく機能させるためのノウハウも、これまで実践してきた企業や個人からインターネット上で共有され、一気にリモートワークが浸透する機会となっています。 さらに、新卒採用・経験者採用においても、オンライン説明会やウェブ面接が広まりつつあり、今後、採用後の「オンボーディング」のプロセスについてもリモートで実施できる体制が求められつつあります。 オンボーディングとは、新しい社員が会社に入り、業務やチームに馴染み、組織の一員として戦力になるまでの一連の受入れ〜定着化〜戦力化のプロセスのことを指します。 オンボーディングは、通常のオフィスでの受け入れにおいても、新入社員の短期離職を避け、より短い期間で新入社員が力を発揮して、組織の戦力となってもらうために、非常に重要なプロセスです。リモートで実施する場合には、さらに注意が必要となります。 本記事では、リモートワークでの新人のオンボーディングを成功させるためのベストプラクティスを紹介します。
オンボーディング設計
オンボーディングプロセスを整理・定義する
- 入社時にするべきこと入社当日翌日などまずすぐにやるべき、PCセットアップ、入社手続き書類、など、主に人事・情報システム部門が行うべきタスクをまとめます。
- 最初の1週間、1ヶ月で行うべきこと各種ツールが使えるようになる、関係するチームメンバーと顔合わせするなど、いつ頃までに何をしておくべきかおよそのスケジュールを作ります。
- 継続的に行うべきこと上長との1:1、チームの週次定例mtg、全社mtg、など継続的に行うことを定義します。
新人メンバーが知るべき情報を全てリストアップして、ToDoリストとして渡せるようにする
Onboarding Checklist は、全社共通のものが1つと各部で1つ必要となることが一般的です。
リモートでオンボーディングをするために適したツールを使いましょう
- リモート会議ツール(Zoom, Whereby(元appear.in), Googleハングアウトなど)→ 1:1〜N での会話やレクチャーに用います。
- デジタルアダプションツール(WalkMeなど)会社に中にある様々なシステム、例えば、経費精算、勤怠管理、各種申請、顧客管理、営業管理、問合せ管理、これらをどの画面から何ができるのか、まずどのように操作するのか、各種システムの操作をガイドするのがデジタルアダプションツールです。マニュアルを用意して操作方法を学んでもらうこともできますが、マニュアルを読んでもらえない、マニュアルを読んでもいざ画面操作の時にわからなくなるなど効果を発揮しづらいです。
- eラーニングツール → Litmos のようなeラーニング学習管理システムや、一般ビジネス教養を身に付けられるグロービス学び放題など、多様なツール・サービスが日本国内でも展開されています。コンプライアンス、セキュリティなどほぼ全員が受けるべき知識研修は eラーニングツールが適しています。
- 情報共有、ナレッジ蓄積ツール → Confluence, Kibela, Qiita Team,など。各部の業務に関するナレッジを蓄積するには、社内Wiki が適しています。
Technical Onboading(技術的オンボーディング)
会社内の手続き、ルール
勤怠、経費精算など勤務する上で必要な手続きやルールを伝えます。主なポイントと詳細の調べ方、問合せ先をまとめます。
各種ハードウェア
PC・携帯電話など業務に必要なハードウェアを準備します。リモートの勤務場所に送付してリモート接続経由でセットアップする、もしくは、一度オフィスに来てもらってセットアップする、などの方法が考えられます。
各種ツールの使い方
- コミュニケーションツール(メール、Slackなど)
- 情報共有ツール(Confluence, Sharepointなど)
- ファイル共有ツール(Box, Google Driveなど)
- 社内申請ツール(経費精算のConcur, Money Fowardクラウドなど、勤怠労務管理のWorkday, SmartHRなど)
- 業務ツール(SFA/CRM, 問合せ管理など各部で使うシステム)
Business Onboarding(業務上のオンボーディング)
短い期間で業務を担えるようになるため、業務に直接つながる情報、知識、人脈を提供します。
期待値、ゴールの設定
新人メンバーが担う役割に対する期待値、ゴールを明確に伝えましょう。直接の上長が行うことが一般的です。リモートであるかどうかに関わらず常に重要です。少なくとも、新人メンバーと上長とで、会社のミッションとバリュー, 部やチームのゴール、個人のゴールを明確に共有します。
各部・各役割で必要なトレーニングの調整
リモートでのトレーニングは難しい場合が多いでしょう。新人メンバーの横に座って直接教えることはしづらいため、予めどの知識はどの方法で伝えるのかを検討しておきましょう。
- 商品・製品に関する知識研修は動画やeラーニング、マニュアル
- 各部の業務知識が社内Wiki
が効果的かつ情報のメンテナンスもしやすいです。それらで足りない部分を教育担当者(主には、各チームの先輩、リーダー)がリモート会議ツールを使って行います。
業務ツールへの習熟
営業であれば SalesforceのようなSFA/CRM、プロジェクト・タスク管理であれば、Wrike, Jiraなど、業務で使用するツールがあります。ツールの操作方法だけでなく自社の業務ルールに基づいた利用方法を習得するには、デジタルアダプションツールで、操作ガイダンスや業務ルールをツール上に表示するのが効果的です。
必要なミーティングの設定
チームメンバーや密に関わる他部門のコンタクトパーソンとのミーティングを設定します。必要なコンタクトパーソンとつながること、必要な情報が得られるようにすることが目的です。
レビューミーティングの設定
1週間後、1ヶ月後、にオンボーディングが順調に進んでいるか、何か困ったことはないか、業務を進める上で必要なサポートはあるかを確認するミーティングをセットしましょう。
Social Onboarding とは、その組織において、新人メンバーが人が繋がり、チームに迎え入れられていると感じられ、チームの一員として実感を持てるようになることです。これは、リモートワークでは最も気をつけるべき点です。
チームに紹介する
Face-to-face もできる限り設定する。可能であれば、最初に一度だけでもチームと顔合わせをするのがやはり望ましいです。できなければ、Zoom で互いに顔が見える形で行いましょう。
メンター(バディ、チューター)制度
新人メンバーが、組織内のつながるべき人と繋がれるようサポートする役割として、メンター制度は有効です。メンターは、新人メンバーにとって、まず最初に最もつながりを持てる相手、安心を得られる存在となります。
雑談を取り入れる
チームに対しての心理的安全性を保つためにも、業務上の相談や共有をスムーズにするために、日常の雑談は非常に重要です。オフィスにいるときは、目が合って話しかけたり、ランチを共にしたりする中で自然と行える雑談が、リモートでは滅多に発生しません。毎朝5分の会話をするなど、一見無駄なような時間が、それ以外のコミュニケーションの質を高めることは是非理解しておきましょう。
Organizational Onboarding(組織へのオンボーディング)
リモートで課題を感じる最も大きな点かもしれません。明文化されたミッション、ビジョン、バリューも価値がありますが、やはり、それ以上に、実際に働く社員の言葉や行動を目にし、会話を重ねることが、企業文化を伝えていくためにはとても有効な方法です。そのため、リモートでは、意識して、コミュニケーションの量をまず維持することを心がけてください。メンターや上長とのリモート会議ツールでの1:1や、チームでのミーティング、これらのコミュニケーションを、リモートのメンバーもきちんと含めること、そして、オフィスにいるメンバーもリモートのメンバーも同じように意見やアイデアを交わし、考え方とその背景となる価値観も共有することが重要です。
オンボーディングにおける原理原則は、オフィスでもリモートでも変わりはありません。しかし、リモートでは、物理的な距離があるため、新人メンバーが目と耳にする情報を意図して設計しておかなければ、オフィスにいる時に比べてはるかに、組織のこと業務のことが伝わりにくくなります。同時に、新人メンバーの様子も見えづらいため、困って不安を感じているのか、仕事を楽しめているのかも気づきづらくなります。だからこそ、リモートワークにおける新人オンボーディングを考えることは、オフィスにいる新人オンボーディングにも本来必要なものに気付けるチャンスとなるでしょう。