新しいソフトウェアを導入する際には、従業員にそのソフトウェアを使い始めてもらうことはもちろん、継続的に活用して定着化させることが重要です。DXにおいてツールの活用は避けて通れませんが、企業が活用するSaaSツールが増える一方、その活用度は平均で全体の40%と、以前として定着化は多くの企業課題となっています。
本記事では、オンボーディングの重要性やそのメリット、効果的なオンボーディングのためのベストプラクティス、避けるべきポイントなどを解説します。
オンボーディングとは
オンボーディングとは元々「新人研修」という意味で使われ、新入社員がスムーズに組織や部署のルールを理解し、仕事に慣れてもらうための人材育成プログラムを指します。この新入社員のオンボーディングを意味する言葉が派生して、企業がシステムやソフトウェアを導入する際に、新しい従業員やユーザーを教育し、スムーズに適応させるプロセスという意味でも「オンボーディング」という言葉を使うようになりました。
主に導入初期の段階に焦点を当て、単に新しいユーザーを追加することだけではなく、早期に慣れてパフォーマンスを発揮できるようにすることが目的です。以下のようなアクションが含まれます。
- 新しい組織のルールやシステム、ソフトウェアの基本的な使い方を教える
- 会社のポリシーや業務フローを理解させる
- 新しいユーザーが迅速に業務に取り組めるようサポートを提供する
オンボーディングはユーザーがシステム、ソフトウェアに抱く第一印象
オンボーディングはユーザーとシステム、ソフトウェアとの最初の接点であり、その最初の印象は非常に重要です。もし導入時に適切なサポートがなく新しいシステムに対して嫌悪感を抱いてしまったら、興味や使用意欲は低下してしまい、結果的に企業にコストをかけることになります。オンボーディングについては、以下のようなデータも出ています。
- 36%の人事担当者が、オンボーディングプログラムを自動化・組織化できない原因としてテクノロジーの欠如を挙げている(Businesswire, 2018)
- 構造化されたオンボーディングプログラムに参加した従業員は、3年間会社に残る可能性が69%高まる(ClickBoarding, 2020)
- オンボーディングトレーニングを実施している企業は、従業員を50%の確率で維持できると推定されている(Harvard Business Review, 2018)
- 悪いオンボーディングを経験した従業員の約10%が離職している(Business News Daily, 2020)
つまり、継続的な活用と定着化のためにはオンボーディングでまず好印象を与えることが必要不可欠なのです。
良いオンボーディングのメリット
良いオンボーディング体験は、単に従業員の満足度を向上させるだけではなく、その成功は組織全体に大きな影響が期待できます。代表的なものとして以下が挙げられます。
- 生産性の向上
- 定着率の向上
- エンゲージメント向上
- トレーニングの効率化
- 従業員満足度の向上、早期離職の減少
- エラーやミスの減少
よくあるオンボーディングの落とし穴
オンボーディングにはこれらの多くのメリットがありますが、計画段階でミスをしてしまうと逆効果となってしまいます。オンボーディングプロセスを計画する際に避けるべき、代表的なミスは以下の通りです。
- サポートの受け方がわかりにくい、または欠如している
新しいシステムやソフトウェアの導入時には、ユーザーはたくさんの疑問を抱えます。これらの疑問や課題を迅速に解決できるよう、ユーザーが容易にサポートを受けられる環境を整えることが重要です。
- 測定や分析をしていない
オンボーディングの中でユーザーがつまづくのはよくあることですが、ポイントはどこでつまづいているのかを分析し、それを修正、改善することです。ユーザーの痛みを理解せずに改善はできません。
- オンボーディングの先にアダプションがあることを理解していない
オンボーディングは、単なるウェルカムメールやバーチャルツアーで終わるものではありません。オンボーディングとセットで議論されるのがアダプションです。アダプションとオンボーディングは、どちらも新しいシステムやプロセスに関わる概念ですが、目的や範囲が異なります。
アダプションは、新しいシステムやソフトウェアがユーザーによって実際に採用され、日常的に使われるようになること、つまり定着化を指します。オンボーディングが導入初期に焦点を当てているのに対し、アダプションは長期的な使用と定着を目指すのです。以下のようなアクションが含まれます。
- 新しいツールや業務プロセスが日常業務の中で継続的に使われるようになること
- ユーザーがそのツールを効率的かつ効果的に活用できる状態を指す
- ソフトウェアやシステムが企業全体で定着し、最大限に利用されるようにする
これらからも分かるように、オンボーディングとアダプションという概念においては2つの大きな違いがあります。一つはタイミングで、オンボーディングは初期の導入段階に重点を置く一方でアダプションはその後の長期的な利用促進に焦点を当てます。二つ目は目的で、オンボーディングは新しいシステムやソフトウェアに慣れることを支援するプロセスである一方、アダプションはそれらが日常的に活用され、その効果を最大限発揮するためのプロセスです。この記事ではオンボーディングのポイントを主にご紹介しますが、真の成功のためにはオンボーディングとアダプションはセットで考える必要があるのです。
ソフトウェアのオンボーディングのベストプラクティス
- ユーザージャーニーを設計する
ユーザーがどのようにシステムやソフトウェアを使い始め、活用していくか(ユーザージャーニー)を設計します。ユーザーのニーズや目標に基づいて設計し、具体的なステップやガイドラインを提供することで利用促進を実現します。
- プロダクトツアーを提供する
ユーザーが初めてソフトウェアに触れる際にはわかりやすいプロダクトツアーを提供しましょう。具体的な機能や設定をステップバイステップで案内することで、ユーザーがシステムに慣れる手助けをします。重要な機能や使い方を明確に説明します。
- ガイドを提示する
ポップアップやクリック可能なガイドなどを提供することで、ユーザーがスムーズに進めるようにサポートを強化します。
- ユーザーがつまづく点を分析し、調整する
ユーザージャーニーのどこでつまずいているのかを分析し、必要な改善を迅速に行います。
- モバイル対応を最適化する
モバイルデバイスでの利用が一般的になっている今、モバイル最適化は必須です。これを怠ると、ユーザーを失う可能性があります。
- 従業員のフィードバックを集める
フィードバックは非常に貴重な情報源です。これらをプロセスに組み込み、効果的に活用しましょう。
まとめ
この記事では良いオンボーディングのメリットや、避けるべきミス、そしてベストプラクティスを紹介しました。ぜひこれらをヒントにオンボーディング、そしてその先のアダプションの計画を練っていただければ幸いです。また、WalkMeが提供するデジタルアダプションプラットフォームは導入初期のオンボーディングのみならず、定着化までをトータルでご支援しています。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせください。