営業担当者は営業活動に加えて、商談内容を入力したりするデータやプロセス管理作業に多くの時間を費やしています。多くの企業が活用するCRMシステムは営業活動のライフサイクル全体を支え、営業プロセスやワークフローを効率化しますが、CRMツールの定着度が低いと、どんなに野心的な営業プロモーションも頓挫してしまう可能性があります。Finance Onlineの調査によると、営業職の22%がCRMについて依然として不安を抱いていることがわかっています。営業の業務効率化を実現するためにも、この記事ではCRMの定着化を推進する方法やその重要性、利点、課題について探ります。
CRMの定着化とは
そもそもCRMが定着化したと言えるのは、企業がCRMを効率的に他のテクノロジースタックと統合し、その潜在力を最大限に活用できる状態であり、最終的に営業担当者がそのメリットを享受できる状態を指します。
昨今のCRMは単なる連絡先管理ではありません。円滑な営業プロセスを実現し、ワークフローの生産性を高め、担当者が顧客をパイプラインに沿って迅速に活動できるよう、様々な角度から営業支援をしています。Statista社の調査によると、CRM市場の世界収益は2010年の140億米ドルから690億米ドルに増加しました。これは550億米ドルの増加、つまり393%の成長を意味します。
CRM定着化を推進するための方法
- アプリ内のガイダンスでリアルタイムにサポートする
従来、CRMのトレーニングではタスクのやり方を一つひとつ習得していましたが、営業活動に付随する、多岐に渡るタスクやプロセスを営業担当者に全て覚えてもらうのは困難です。また、入力方法や入力ルールがわからずに途中で放棄してしまう、もしくは誤ったデータの入力をしてしまうこともあるでしょう。
これらを未然に防ぎ、営業担当者の業務体験とデータ入力の正確性を向上するためには、デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)が効果的です。WalkMeのようなDAPはCRMインターフェイス内でリアルタイムに適切なガイドを表示し、取るべき各ステップを指示します。画面を切り替えていちいちマニュアルを確認したりする必要はありません。このようなアプリ内のガイダンスは、新メンバーのオンボーディングやトレーニングにはもちろんのこと、新しい機能の展開時に迅速に習得してもらったり、データ精度の低い部分などに焦点を当てて表示させることができます。これにより、営業担当者のCRM上のプロセスにおけるイライラを軽減し、効率を向上するのはもちろん、彼らの本業である営業活動に集中できるようになります。 - 営業担当者の声を意思決定プロセスに取り入れる
CRMの定着化を成功させるためには、営業担当者が「自分ごと」として関われるようにすることが重要です。ツールをただ渡すだけでなく、その活用方法などの意思決定プロセスに営業担当者を巻き込みましょう。CRMを導入する段階で彼らから意見を求め、「今のシステムで改善してほしい点」や「日々の顧客データ管理で困っていること」について質問してみてください。
導入後もこのフィードバックループを続け営業担当者の実際の経験に基づいてフィードバックを集め、システムを調整していくことが大切です。こうした対話の積み重ねによって、営業担当者も自分の意見が尊重され、CRMが自分の業務を支えるツールであると感じるようになります。 - ダッシュボードをニーズに合わせてカスタマイズする
CRMのダッシュボードは、営業やカスタマーサクセスチームにとって必要な情報が集まる重要な場所ですが、ユーザーによって見たい情報は異なります。誰にでも同じダッシュボードを見せていては、従業員側の無駄な操作が増えてストレスや時間の浪費につながります。ユーザーごとにカスタマイズされたダッシュボードを用意してユーザーが自分にとって必要な情報にすぐアクセスできるようにする必要があります。
こうしたユーザー体験の向上から、CRMへの抵抗感を減らし定着率の向上を目指します。各役割や業務フローに合わせてダッシュボードを調整することで、必要なデータやツールに素早くアクセスでき、ワークフローが円滑になります。 - AIによるデータクリーンアップで信頼性を向上する
不正確なデータは営業部門にとって大きな障害になります。古い連絡先情報や誤ったリードステータス、重複データがあると、営業活動の効率が下がってしまいます。営業担当者が存在しないリードを追いかけたり、顧客に合ったアプローチをしないと、古い情報によって顧客関係も悪化しかねません。
AIによるデータクリーンアップがこれに効果的です。エラーの自動検出や重複の統合、最新情報への自動更新などを通してデータの整合性を保持することができます。 - CRMチャンピオンを任命する
CRMが定着化するためには、使い手のモチベーションが高まる環境が必要です。CRMに精通した「チャンピオン」を社内で任命しましょう。チャンピオンは社内で一番のCRMユーザーであり、プラットフォームに対する深い理解を持っている人を指します。チャンピョンは同僚の質問に答えたり、問題を解決したりと現場でのサポート役として活躍する他、CRMの活用例を示したり、業務効率化の方法を示してくれるので、他の従業員にも良い影響を与えます。 - 適切なタイミングでターゲットを絞ったトレーニングを実施する
長時間の一般的なトレーニングは、知識の定着がしづらいため特定の機能や作業に合わせて、必要なタイミングでトレーニングを行う方が効果的です。ユーザーに負担をかけない要点を絞った短いレッスンを提供しましょう。例えば、オンボーディング中や新機能の導入時、特定のワークフローを完了させるタイミングなど、ユーザーが必要とする瞬間に、マイクロラーニングやインタラクティブなガイドを提供します。 - CRM内のヘルプ機能
困った時に即時にサポートを受け取れないと、ユーザーにとって大きなストレスになります。CRM内に組み込まれたヘルプ機能があれば、リアルタイムに問題を解消することができるでしょう。必要なときにウォークスルーやナレッジベース、チャットサポートなどのオンデマンドリソースにアクセスを促すことで自分で問題を解決できるようになります。ユーザーに自己解決の力がつくことで自信が生まれ、社内サポートの負荷も軽減することができます。 - DAPやCRM内のアラートで最新情報を常に提供する
CRM内のプロセスを変えるときなどは、適切にその内容を伝えなければ大きな混乱を招くことがあります。DAPやCRM内でユーザーにアラートを出し、更新情報や新機能、重要なリマインダーなどを通知することで、情報不足による混乱や推測を防ぎます。 - インセンティブでエンゲージメントを促す
CRM導入の初期段階は特に重要です。たとえば、トレーニングの完了、データの更新、特定目標の達成に対してインセンティブ制度を取り入れユーザーのエンゲージメントを促しましょう。楽しく学びながら達成感を得られる仕組みがあると、早期にCRMを受け入れ使いこなすユーザーを確保できます。
低いCRM定着率がもたらす代償
現代のビジネスが直面している課題の一つは、顧客の多様なニーズや期待に応えることの難しさです。顧客基盤が広がる中、営業やマーケティングチームはリソースが限られ、対応が追いつかなくなっています。競争が激化する中で、CRMのような顧客管理ツールは急速に進化しています。
CRMは、営業チームの生産性の向上に欠かせないツールとなっており、CRMの導入はもはや選択肢ではなく必須事項です。そしてその定着率が低いままだと、データ管理に優れた競合他社に顧客を奪われたり、ワークフローの非効率性から時間とリソースを浪費したり、成長を促すための重要なインサイトを得られなくなったりしてしまいます。CRMが持つ本来のメリットを発揮できなくなる多くのケースは定着率が低いことに起因しています。CRM本来の強みを活かすには、営業担当の意識改革から始める必要があるでしょう。