【後編】DAP Summit 2024              デジタルアダプションプラットフォーム元年 DXを先導する変革者たちの祭典

WalkMe Team
By WalkMe Team
Updated August 8, 2024

 

<後編>

パートナー様講演:ソフトバンク

■目指すべきゴールへ、業務の自動化とマーケティングをWalkMeと加速

冒頭で、WalkMeとパートナーシップを締結した経緯について、「業務の自動化という目線でのデジタルオートメーションと、ECサイトをお持ちのお客様のデジタルマーケティングの2つに対して、非常に効果的だと感じたところからのスタートです」と振り返ったのは、ソフトバンク株式会社 法人統括 カスタマーサクセス本部 副本部長 石黒洋氏です。

後者のデジタルマーケティングにおいては、ECサイトにおいて機会損失につながるようなポイントで顧客を誘導し、しかるべき導線を提供できるようにすることで、離脱を防ぎ売上につなげる効果が期待できます。実際、ソフトバンク社内でも、SalesforceにWalkMeを実装しているほか、ワイモバイル(Y!mobile)の法人オンラインサイトにWalkMeを導入。アラートやレコメンドなどにより顧客の迷いを軽減しながら途中離脱を効果的に防止しています。また、ソフトバンクが導入を支援した株式会社JR東日本ネットステーションでは、JRきっぷをWebで手配できる「えきねっと」の操作をWalkMeが支えています。

「最後の最後にお問い合わせボタンを置いておくことだけでも、実は離脱を防げるのです」と語る石黒氏は、導入プロジェクトにおける関わり方に言及。顧客のゴールの設定に始まり、KPIの設定、導入後の改修に至るまで一気通貫で対応できることをアピールしました。

「当社が目指すところは、お客様が実現したいDXです。そのためには単にソリューションを導入するだけでなく、お客様の業務プロセスそのものの変革がセットである必要があります。そこにWalkMeが寄り添うということではないかと考えています。」(石黒氏)

「テクノロジーは、幸せをつくれるか。」という問いに挑戦し続けるソフトバンクは、、DX定着化を加速する取り組みをWalkMeをと共に多くの幸せを生み出しています。

 

パートナー様講演:エクレクト

■本質的な課題解決と「今できる改善」をセットで推進

「今日、日経平均が4万2000円に到達しました」と切り出した日本初のインターネット専業銀行の設立にあたり、元ジャパンネット銀行取締役会長である、株式会社エクレクト 取締役会長 小村充広氏は、日本国内の金融DXとコンタクトセンターの実態に言及。日本の金融機関はこの30年、リスクマネージメントの高度化に取り組む一方、支店の再編を進めてきました。そんな中で必要に迫られ、約25年前に出来たコールセンターが、いま、コンタクトセンターへの転換を図ろうとしています。

その理由について、「SNSやチャットの普及やWebサービスの進化に伴い、従来の電話中心のサポートだけでは、お客様の要請や社会のデジタル化に対応できなくなってきているからです。また、お客様の行動やニーズを分析しながら経営に活かしていこうという流れもあります。デジタル化やAI化により捻出できたリソースを、人間にしかできない領域へのシフトが、今後の大きな戦略になってくるはずです」と小村氏は語り、株式会社エクレクト 代表取締役 辻本真大氏にバトンタッチしました。

Zendesk APAC No.1パートナーであり現在600社以上の取引先を抱えるエクレクトの強みについて、「最適なソリューションをご提供しながら、使いこなしていただくところまでをご支援しています」と紹介した辻本氏は、企業の改善への取り組みにおいて全体設計がないことを指摘。「個別最適な対処を行ってしまうことで、逆に生産性が上がらない状況が生まれています。いわゆる変革の壁ですね」と語ります。

また、この壁を乗り越えるには、難易度の高い本質的な課題解決と同時に、その手前にある「今できること」からの改善をセットで進める必要があるとして、次のように提案しました。

「変革はシステムを入れたら終わりではありません。DAPを活用することで現状が可視化され、期待どおりの成果が得られているかどうかの判断が可能になります。ただし、そのシステムを使いこなすためのDAPではあるものの、DAPそのものを使いこなせない限り、その次は見えてきません。エクレクトなら後者も含めご支援できますので、お気軽にご相談ください。」

 

特別講演

■DXレポートで本当に伝えたかったこと:物事の本質を見極める

経済産業省が公表する「DXレポート」の生みの親である株式会社AIST Solutions, Vice CTO デジタル庁・シニアエキスパート 和泉憲明氏は、独特の語り口で終始聴衆の笑いを誘っていました。典型的なDXの成果として、和泉氏が紹介した事例の中から、ある地方都市にある中核病院の事例をご紹介します。

資金がショートする中で、回診に使う専用端末の買い替えを断念した同院は、看護師に駅前で販売していた中古のスマホを配布。点滴や薬剤など、院内のあらゆる消費財にQRコードを付けて流通させました。もちろん本人認証もQRコードで行い、患者の様子はカメラで撮影してして共有。結果、台車に専用端末を載せてガラガラ押して歩く姿は一切見られなくなり、圧倒的に作業が効率化されました。サービスレベルが格段に上がっても定時に帰れるので、年間7割もの離職率が3割まで減少。いい人材も雇えるようになったという話です。

紙カルテが電子化されるだけなら、ペーパーレス化が実現するぐらいのことですが、看護師の働き方を改革し、データドリブンに経営改善を行えるようになった点が、単なる電子化との大きな違いです。ただし、「単に端末をスマホにすればいいわけではなく、目的や戦略が明確になっていないと、道具を導入して終わりになってしまいます。これこそが、僕がDXレポートで言いたかったことです」と和泉氏。また、日本は新しい仕組みを実現しようというときに、プラスアルファの価値として既存の仕組みに足し算しようとしがちですが、「重要なのはディファレントと引き算」だと和泉氏は強調します。

もう一つ、アラスカ航空の事例も考えさせられます。彼らの機内にあるのは、充電器のみ。テレビもなく、厨房もないから機体が軽くなり燃費もよくなります。搭乗前にアプリでフードメニューを頼んでおけば、機内で好きなものが食べられ、自分の端末で映画も観られます。サービスレベルは確実に上がっており、すべては戦略的に考えられていることがわかります。

「マッサージをDXするのに、最新のロボットアームを提案してきた、みたいな話が普通にあるんですよ。欲しいのは、足湯に10分つかり、マッサージ機に40分乗せて、最後に5分仕上げをするだけで今までと同等以上の疲労回復効果が見込めます、みたいな提案です。改善を回す際にも注意が必要です。大型食洗器を導入してコストダウンしても、料理の味は一ミリも美味しくなりませんよね?」(和泉氏)

物事の本質を見極めないと、何のためのDXなのかわかりません。方法を間違えると、的外れな変革をすることになりかねません。データを使ってサービスを向上し、本当の意味での改革を進めることの重要性を再認識させられたセッションでした。

 

特別講演

■CIO×CDOが考えるDXへの取り組み方

DAP Summit 2024を締めくくる最後のセッションには、WalkMe 代表取締役の小野をモデレーターに、CIO Lounge 理事長 矢島孝應氏とCDO Club Japan 代表理事 加茂純氏による対談が行われました。

Q:日本のDXに足りないことは?

CIO矢島:1つは経営者のデジタルやITに対する理解度が非常に低いこと。もう1つは、社内で開発ができないこと。これは人材を内部に確保しなかった経営側にも問題があります。

CDO加茂:デジタルがわかる人が社長になっているのが米国。早くそういう人が経営者になって経営全体を見てほしいですね。そうしたら状況も変わるかなと思います。

CIO矢島:大賛成です。CIOというポジションが長年あるものの、執行側にいるだけで、戦略決定を行うボードメンバー側に入っていないんですよね。経営の中に入り込んで動いていただき、最後はトップに上り詰めていただきたいものです。

 

― Q:今日のセッションの中で攻めと守りの話がありましたが、CIO、CDOとしてはどのように取り組まれていますか?

CIO矢島:CIOが両方やっているところもあるし、CDOが両方やっているところもあり、明確に分けなくてもいいのではないかと考えています。日本企業の問題は縦割り組織でサイロ化されていることにあります。攻めも守りも両方必要で、どちらが強くても弱くてもうまくいきません。両方できる人はそんなに多くありませんから、上手に分担しながら動いていければよいと思います。

 

― CIO、CDOがとるべきアクションについてはどうお考えですか?

CDO加茂:デジタル化を目的にしてはいけません。パーパスを大事にすべきです。そこに気を付けないと間違った方向に進んでしまいます。

CIO矢島:時代の中で、企業の使命、価値観、パーパスが変化しています。自分の会社がもうかればいい、という考え方では生きていけません。業界、社会のトランスフォーメーションにつなげていくために、外の人とアクションを取り、どうすれば社会がもっとよくなるのを考えていく必要があります。

CDO加茂:会社をどう変えるか、会社が生き残るためにどう変えるか、そのためにデジタルを使うという意識が大切ではないでしょうか。

 

― 最後にDXに関わる方々へのアドバイスをお願いします。

CIO矢島:どんどん自分の想いをもって社長をはじめ経営層にぶつかっていきましょう。ぶつかって結果聞いてもらえなかったら、CIO Loungeが相談に乗ります。

CDO加茂:これからは組織とか、ポジションとかに関係なく、正しいと思ったことは言う、上にあげることです。それを受け入れられない会社は生き残れない可能性が高いでしょう。受け入れる会社が伸びていく会社。そういう会社が自分のためにもなるのだと考えることです。

セッション会場の近くには、WalkMeやパートナー企業様のテクノロジーやソリューションを現地にて体験いただける展示コーナーが設置され、多くの参加者が熱心に担当者の説明に耳を傾けていました。また、イベント終了後にはネットワーキングパーティーを開催。軽食やお飲み物を片手に登壇者や参加者同士の会話が弾み、あちこちで有意義な情報交換が行われていました。

2024年=DAP元年。

日本のDX活動においてDAPはどこまで貢献できるのか。DXを先導する変革者たちの祭典「DAP Summit 2024」は、DAPへの関心の高さをリアルに感じられる貴重な機会となり、また、今後のさらなる広がりを予測させる盛り上がりとなりました。

 

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