AI業界は2022年11月のChatGPTの誕生を節目に大きく変わりました。今やプライベートでも仕事でもAIを利用している方が増え、AIの影響力がますます大きくなる一方、シャドーAIを特定し適切に管理することの重要性も増しています。ある調査では、自社でシャドーAIが使われていると認識しているセキュリティ担当者が全体の96%であるともわかっています。特に生成AIの活用は大変幅広いユースケースで進んでおり、適切なリスク管理が必要不可欠です。
この記事では以下のポイントを中心に、シャドーAIを管理する重要性やプロセスをご紹介します。
- シャドーAIツールとは?
- なぜシャドーAIツールの使用が発生するのか?
- シャドーAIツールを管理しない場合のリスク
- シャドーAIツールを管理する方法
シャドーAIとは?
シャドーAIとは、IT部門が承認していないのにも関わらず従業員が使用してしまっているChatGPTやGoogle Bardなどの各種AIツールを指します。
シャドーAIの使用にはさまざまなリスクがあるため、従業員が使用しているAIツールをしっかり把握し、なぜこれらのツールを使っているのかを理解することで、承認されていないAIツールの使用を抑制することが重要です。
シャドーAIが発生する理由
従業員が承認されていないAIツールを使うのには様々な理由があります。一般的には以下のような直面している課題を迅速に解決するために使用するようですが、これは甚大なセキュリティ侵害につながる可能性があります。
- 厳しい締め切りの中でタスクを迅速に完了させるため
- ハイブリッドワークの普及により、ガバナンスやポリシーが浸透していないため
- 複雑なソフトウェアに圧倒され、自分が慣れたツールを使おうとするため
- アクセス権限や導入時の設定が原因で、適切なツールへのアクセスがないため
- リモートワークの普及により、従業員間のコミュニケーションが不足しているため
- セキュリティに関する懸念に対する認識の欠如しているため
まずは従業員にシャドーAIを利用する原因を尋ね、理解することが重要です。
シャドーAIを管理しないリスク
IT部門で承認されていないAIツールの使用を管理しないと、主に4つのリスクが生じます。機密データのセキュリティ侵害からブランドイメージへの影響など、組織に深刻な影響を与える可能性があります。それぞれご紹介します。
プライバシーリスクとデータ保護
AIツールは便利である一方、データおよびプライバシーセキュリティに重大な脅威をもたらします。適切ではない方法で機密情報を生成AIツールにアップロードすると、データプライバシーの侵害を引き起こし、結果として財務的損失や企業の評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
生成AIモデルは適切な管理をしないと、ランサムウェアが仕込まれた偽のウェブサイトに誘導してしまう可能性もあります。従業員がAIにどのような機密データを入力しているか、そしてツールがどのように使用しているかを把握しない限り、データを暗号化しても無意味です。
最近ではMicrosoftのAI研究者が38TB(38台分のハードドライブに相当する)の機密データを漏洩した事件が発生しました。誤った活用方法をすると原因で大量の機密データが不適切な手に渡る可能性があるのです。
著作権侵害と盗用
AI技術は素早くコンテンツを生成する能力に優れていますが、いつも適切な内容で、独自性のあるコンテンツを生成できるとは限りません。
AIが生成したコンテンツを確認や編集をせずに使用すると、知らない間に他コンテンツの盗用をしてしまう可能性もあります。さらに、他企業の知的財産権に関連する著作権侵害のリスクも伴います。
従業員にAIツールを利用する上でのリスクを理解させること、そして定期的にそのアップデートをすることが重要です。
知的財産の無断流出
生成AIの不適切な利用をすると、従業員が意図せず企業の知的財産や機密情報などを公開してしまうリスクもあります。組織の知的財産の無断公開を防ぐための基本的な対策を周知し、機密データを守ることが重要です。
AIによるバイアス
AIは学習するデータセットや、使い手のバイアスを引き継ぐことがあります。年齢や性別など様々な要因に対するバイアスが入ってしまうと、不適切な表現をしてしまい評判の損傷や法的問題に発展するリスクもあります。
最も有名な例として、Amazon社のAI人材採用ツールで性別に関するバイアスがあり、採用において男性候補者を優遇した、というケースがあります。このような問題を起こさないよう、AIシステムにおける公平性や多様性を担保することはもちろん、倫理的な活用を確保する必要があります。
シャドーAIを管理する方法
従業員がシャドーAIを使用しないよう、適切なガバナンスフレームワークを構築することが必要です。AIアプリケーションごとにリスクを徹底的に分析し、ガバナンスフレームワークを自社の状況に合わせて調整しましょう。次の手順でコンプライアンスリスクを管理します。
- アプローチの見直し
微妙なコンテキストを元に判断するようなタスクが多く、AIが人間に取って代わることが難しい業務においてはそれらの特性を認識し、見合った対処をすることが重要です。これらの制約を正しく理解し組織内で効果的にAIを活用しましょう。 - 警戒心を持って管理する
常に警戒心を持ってデータ品質や、機械学習の管理、そしてAIの活用の脅威に対処することが必要です。これらのリスクを積極的に特定、軽減することで組織の健全性と安全性を保ちます。 - 人間中心のアプローチを採用する
AIの管理においてはマニュアルでレビューを行い、人間中心のアプローチでAIのバイアスや不公平な傾向を防ぐことが必要です。倫理的かつ公平な活用を促進します。 - AIに完全に依存しない
AIツールは大変便利ですが、そのアルゴリズムが意思決定プロセスに大きな影響を及ぼすことを理解し、適切な監視体制と慎重な判断が重要であることを忘れないようにしましょう。 - ツールの実装前に十分に調査する
既存のツールに関しては、デジタルアセットの正当性を調査し、組織の価値観や倫理基準、全体的な目標と一致するかを常に確認します。生産性やコスト削減は大きなメリットではありますが、組織の整合性を保つことも同等に大切です。 - 明確なポリシーを策定する
AIポリシーを明確に定めることが必要不可欠です。その作案および展開段階で従業員からのフィードバックをもらい、包括的で効果的、かtj倫理的なAI統合のフレームワークを構築します。
これらの戦略を実行することで従業員によるシャドーAIの使用を抑制し、効果的なAI活用へと繋げます。また、フィードバックを取り入れたAIポリシーを従業員が理解し、納得することで、長期的な成功につなげます。
シャドーAIのリスクを最小限に抑えるためには、従業員への教育とサポートが非常に重要です。
AIに関する倫理やセキュリティの基本的なルール、適切な使用法についてしっかりとトレーニングを行い、従業員が正しい判断を下せるようにすることが必要です。なぜ特定のデータアクセスを制限するべきか、その理由を従業員に明確に伝え、シャドーAIを使わないよう促すことも重要です。積極的なアプローチでリスクを防ぎ、組織内で適切なAII利用を促進しましょう。
WalkMeではアプリケーションの使用状況を可視化し、従業員のシャドーAIの利用を早期に特定することも可能です。ご興味がある方はぜひお問い合わせください。