150社への展開をスケジュールどおりに完了するのは難しいと判断したとき、リカバーする方法として真っ先に候補に挙がったのが、WalkMeだった。ヤマハ音楽振興会の協力会社でチャットボットのサポートを担当する山田義貴氏は「WalkMeを初めて見たときに、システム移行のハードルを下げてくれるツールだと直感しました」と振り返る。
「実際にシステムの定着化を図ることの難しさを痛感するなかで、ユーザーの混乱を抑えつつ移行プロジェクトをスムーズに進めるにはWalkMeが力を発揮してくれるに違いないと考えました」と中村氏が語るとおり、迷うことなく導入を決定した。
実装作業は中村氏の指揮のもと、5社14名のメンバーがチーム体制で推進。ひとまずスケジュールを最優先に、紙の運用マニュアルをすべてWalkMe上に実装する方針で進め、その過程でWalkMeの機能理解を深化させつつ、ユーザーに影響の及ばない範囲で細かい調整を行っていった。
同財団によるWalkMeの使い方には、主に3つの特徴がある。いずれもNavi-TONEの早期定着化を目指した独自の工夫が伺える。まず1つ目はシャウトアウト機能の使い方である。ユーザーに注意喚起したい重要な内容をポップアップさせるのが一般的だが、同財団では月ごとに季節の挨拶を表示させ、新しいシステムに愛着を持たせる目的で使っている。このささやかな心配りが意外にも好評だという。
2つ目は、ユーザートレーニングを目的としたオンボーディングタスクの活用だ。一人ひとりのユーザーが自分のペースでシステムの使い方を自習できるようにし、その進捗状況が一目で把握できる。
「ひととおりシステムの使い方を学習した後に質問がある場合は、ヘルプデスクに直接問い合わせできるように導線を整備することで、特約店のキーマンはトレーニングに時間を割く必要がなくなります。フロント業務を担当する従業員にも積極的にNavi-TONEを使ってもらい、ユーザーの裾野を広げて管理の負荷を分散させる狙いもあります。」(中村氏)
3つ目は、アクションボットの活用である。複雑なフォームへの入力作業を簡素化する目的で使われることが多いこの機能を、同振興会ではヘルプデスクへの増え続ける問い合わせを防ぐ目的でFAQに適用している。コールセンター側に蓄積された問い合わせデータを吸い出してアクションボットに実装し、ユーザーはカテゴリー検索またはキーワード検索で回答を引き出せる仕組みだ。
「WalkMeのインサイト機能を使ってユーザーが検索したキーワードやヒット率などを毎週分析し、新たにFAQを作成したり、特定のキーワードを既存のFAQに紐づけたり、必要に応じてFAQをブラッシュアップしています。」(協力会社 チャットボット担当 目取真 裕希氏)